キューブで行われた主武器の選択。キム・チュンドンが選んだのは、英雄を目指す訓練生には不向きとされる銃だった。魔力を扱える者が剣などの伝統的な武器を選ぶ世界で、その決断は周囲の驚きと疑念を招く。
この世界の銃は、圧縮した魔力を込めた魔法弾を使用する。一般兵士にとっては強力な武器であり、訓練用の剣を上回る威力も持っていた。しかし、銃には使用者の魔力を上乗せできないという欠点がある。どれほど使い手が成長しても威力には限界があり、英雄や傭兵が主武器として選ぶことはほとんどない。
一方、剣には神話や伝説に由来する強力な武器が存在する。ダンジョンや塔には未発見の名剣も眠っており、優れた武器を手にすれば、使い手自身の成長が行き詰まった際にも突破口となり得る。そのため、英雄を目指す者たちは長い歴史を持つ武器を重視していた。
教官のキム・スヒョクも、以前は剣を使っていたチュンドンが銃へ変更したことに難色を示す。それでも、武器の選択は訓練生の自由であり、結果に対する責任も本人が負うと説明した。銃を選んだからといって訓練や試験が変わるわけではなく、武器の弱点は自分で補わなければならない。
周囲の訓練生たちはチュンドンを奇異の目で見る。しかし、彼には銃を選ばざるを得ない事情があった。元の世界から小説の中へ入り込んだ彼は、チュンドン本人の記憶を受け継いでいない。ほかの訓練生たちが幼少期から約十年間も武器の扱いを学んできたのに対し、彼には剣術の経験がなかった。
現実世界でも運動に親しんでいたわけではなく、扱えそうな武器は弓か銃に限られる。兵役で銃に触れた経験があることから、彼は銃を選択したのだった。
武器選択が終わると、一行は寮へ向かう。途中でも男子訓練生たちから銃の選択をからかわれるが、チュンドンは相手にしない。その一方で、チェ・ナユン、レイチェル、ユ・ヨンハの三人を目にし、自分が設定した以上の美しさに驚く。
到着した一年生用の寮は、百階建ての高層建築が六棟並ぶ豪華な施設だった。部屋は成績に応じて割り当てられるものの、全員に個室が与えられる。上位者には最上階の特別な部屋も用意されていたが、キム・スホは広すぎるという理由で辞退していた。
ほかのクラスの訓練生も集まり、チュンドンは物語の主要人物や敵対する人物を探そうとする。しかし、考え事に気を取られて腕時計型端末の受け取りを忘れ、教官から呼びつけられてしまう。厳しい視線に萎縮する姿を見て、周囲から笑いが起こった。
その後、自室に入ったチュンドンは、充実した設備に戸惑いながら今後を考える。銃を選ぶくらいならキューブを去る方がよかったのではないかとも思う。しかし、彼にはこの世界へ来た理由も、元の世界へ戻る方法も分からない。その手がかりを得るには、物語の本筋に近い場所にいる必要があると感じていた。
手元の拳銃を試そうとしたところで呼び鈴が鳴り、荷物を届けるロボットが現れる。箱にはチュンドンの以前の成績と現在の順位が記されており、キューブでの順位は九百三十四位だった。
届いた大きな箱を開けると、中にはたった一つの品物が入っていた。それはチュンドンの持ち物ではない。彼が元の世界で自分の小説を執筆するために使っていた、ノートパソコンだった。
存在するはずのない私物が目の前に現れたことで、異世界での生活に思いがけない変化が訪れる。