世界最高峰の英雄養成機関キューブは、魔法・科学・工学の先端技術を備えた、東海の巨大な人工島にある。約五千人の候補生に加え、教官や研究者、施設職員なども暮らし、島全体では約五万人が生活していた。
自分が書いた小説の世界に入り込み、キム・チュンドンとして生きることになった語り手も、キューブの一年生だ。チュンドンは優れた素質を持つ一方、原作で目立つ役割を与えられていない。物語の中心から離れた場所で穏やかに暮らせるはずの脇役という立場を、語り手は歓迎していた。
ところが、配属先は一年一組の「ヴェリタス」。シン・ジョンハクとキム・スホが在籍し、ジョンハクとその取り巻きを中心に騒動が起こるクラスだ。巻き込まれずに過ごしたい語り手は、教室でジョンハクと幼なじみのユ・ヨンハを見つける。二人に気づかれなかったことにほっとし、中段の端の席に座った。
授業が始まり、担任のキム・スヒョク教官が自己紹介をする。世界順位は九千七百三十七位。世界に約二百万人いる英雄の中でも、相当な実力者だった。教官は、キューブでは実戦を経験し、成績によって厳しく評価されると説明する。成績が足りなければ留年し、留年できるのは最長二年まで。それを超えれば退学となる。留年せず卒業できる候補生は半数に満たないという。
平穏な生活を望んでいた語り手も、ここでは戦闘訓練を避けられない。教室にはスホやジョンハク、ヨンハのほか、チェ・ナユン、レイチェル、イ・ヨンハンら、原作の重要人物が集まっていた。初日の課題として告げられたのは、主武器を選ぶことだった。
訓練用の武器は多種多様で、一度選べば少なくとも半年は変更できない。剣や槍、サーベルを選ぶ者が多く、スホは剣、ジョンハクは槍を手にする。ヨンハは鞭、ナユンは弓、レイチェルはレイピアを選んだ。
しかし、語り手にはチュンドンが本来どの武器を使っていたのか分からない。近接戦闘にも自信がなく、血が飛び散る戦いに身を置くことも避けたい。彼が目を向けたのは、ほかの候補生が誰も選ばない武器だった。現代では扱いやすい一方、この世界の英雄たちからは最弱と見なされている。
選択をためらう語り手に教官が声をかけ、周囲の視線が集まる。注目を避けたい彼は、思い切ってその武器をつかんだ。手にしたのは拳銃。剣や槍が主流のキューブで、誰も選ばなかった武器を選んだことで、スホやジョンハクを含む候補生たちの目が彼に向けられる。