チェ・ナユンとシン・ジョンハクが水を汲みに行き、キム・スホとイ・ヨンハンが豚を解体する間、ユ・ヨンハはハジンから借りたほうきで避難場所を掃除する。蜘蛛の巣や土埃に覆われていた廃墟は、ようやく野営に使える場所になった。
ヨンハが魔力を使えない理由を尋ねると、ハジンは、現代から持ち込んだ魔力は使えず、この時代の魔力が体内に蓄積し始めるまで二日、扱いに慣れるまで最低一週間かかると説明する。アウトコール後の魔力は現代より濃密だが、制御が難しい。仲間たちが戻ると、ハジンは豚バラ肉とラーメンを調理した。裕福な家庭で育ったナユンたちは当初ためらうものの、食べてみるとその美味しさに驚く。豚は白頭山以上に魔力濃度の高い土地で育っており、肉も貴重なのだという。
食後、ナユンはハジンの長い髪と髭が時代劇の武人のようだと評する。スホも髭の濃さに触れ、ヨンハは顔が隠れるほど見栄えがよくなると小声でからかった。冗談を交わした後、ハジンは一行を集め、過去への転移について説明を始める。
彼らを過去へ引き込んだのは幽霊だが、時間移動に近い奇跡を起こした力の源は、風の山にあった「時間の塔」の残滓だった。塔は攻略されると膨大な魔力を結晶として残す。時間の塔から漏れた魔力も長い年月をかけて凝縮し、紫色の小さな結晶になったという。幽霊はこれを利用し、過去を再現した「記録された世界」へ一行を引き込んだ。そこは現実と同じ物理法則で動く一方、現実世界には影響を及ぼせない魔法空間だった。
この世界にはアスラを名乗る魔人もいる。彼も幽霊に引き込まれた存在で、本物のアスラではない。幽霊と融合して特殊な力を得たため、通常なら命に関わる魔力結晶を食べても、身体を損なわず力に変えられるのだとハジンは説明する。
元の時代へ戻るには、世界を維持する六つの塔の残滓を集め、同時に破壊しなければならない。結晶は光明市庁舎、北東の給水塔、西の武器庫、南の鉄塔などに分けて置かれていた。市庁舎には五千人の住民がおり、ほかの五か所にはアスラの部下が一人ずつ配置されている。ハジンはアスラ本人には勝てる見込みがあるものの、部下たちには相性の問題で勝てないと考えていた。作戦を共有した一行は、午前一時から五時間休むことにする。
夜明け、ハジンは見張りをしていたナユンと話す。長い髪を切らない理由を尋ねられ、呪いの人形を持つ呪術師に呪われるかもしれないからだと答えた。やがてナユンは、幽霊が自分を一九七二年ではなく二〇〇〇年へ連れてきてくれればよかったのに、と漏らす。その年は母親が人生の盛りにあった時期だった。ハジンの事情を思いやる言葉に、彼も両親のことを思い出して胸を痛める。
ナユンは母親が一九七二年にソンモ病院で生まれたと明かす。病院はバイクなら三十分ほどの距離にあるが、この記録世界は限られた区域しか再現しておらず、ソウル中心部へは行けない。母の生まれた場所を訪ねる望みが絶たれたナユンは、落胆を隠すように明るく振る舞い、「残念だ」とつぶやくのだった。